MRS創始者(現社長)をインタビューしました。

なぜMRSパックラフトは品質が良く、斬新的で信頼性が高いボートなのか。一人のアウトドア愛好家が、どのようにして自宅でのボート作りから、ウォータースポーツの世界的リードメーカーへと成長したのか。また彼がこの15年どのようにして創造力と質へのこだわりという才能を融合させたのか…。MRS創設者のストーリをお読みいただいて、読者にとっても何か新しい発見や学びに繋がれば幸いです。

質問 1. どのようにMRSが会社として始まったのか、その背景にある物語を教えてください。

僕は長年アウトドアスポーツが大好きで、昔から休みの日はいつも妻や友達とサイクリングやアイスクライミング、ハイキングに行っていました。カヤックに乗り始めた時は、モノ作りが好きな僕は漕ぎながらどうやって改良しようかというアイデアばかりがいつも頭に浮かびました。それでそのアイデアを活かして自分のボートを試作してみました。それが自分でボートを作り始めたきっかけになりました。

友人と過ごす休日 2023年4月
友人と過ごす休日 2023年4月

ボートの設計を考えたり実際に形にするのは仕事が終わってからの趣味として始まり、僕の最初の作業場は自宅のリビングでした。多くの友達が僕の作ったボートをとても気に入り、彼らはそれに実際に乗って遊んでくれました。そうこうするうちに友達は空気で膨らませるカヤックやパックラフトなどを設計して作るように僕に頼み始めました。そうやってMRSが誕生しました。

質問 2. これまで一番人気な製作品は何ですか

ノマドとバラクーダが一番人気のある製品です。このシリーズの製品は僕たちのお気に入りのデザインでもあり、当社で特許取得済みのモデルです。全モデルの中で静水で最も速度の出るパックラフトです。ノマドは座る位置がボートの中心にあり、船首と船尾が同じ形で対称になっています。横から見ると船体は流線型で、喫水線(水に接するライン)が比較的長いです。幅のより狭い船体ラインは水の抵抗を減らすため、効率的に楽に漕ぐことができます。

NomadS1 サンドベージュカラー

質問 3. 過去二、三年でパックラフト市場が大きく変化していることに気づいていますか

はい、僕たち自身もパックラフターですから。また世界中のパートナーと連絡を取り合っていて、市場や世界経済の変化を目の当たりにしています。どう市場が変化しても、僕たち(当社)が顧客に奉仕するために存在するというのは変わりません。だから世界が変わっても僕たち(当社)はその変化に適応していきますよ。

質問 4. 最近私達がインタビューした数人のユーザーが、MRSパックラフトを選んだ理由は経験上、他社モデルより速くて操作性がより良いからだとおっしゃいました。どのようにしてパフォーマンスを上げていますか

理由はいくつかあると思います。

●一つ目は僕たち自身がウォータースポーツ愛好家であり、僕たち自身もパックラフターということ
これはとても大切な点です。僕は22年間毎週川へ行っています。そこで多くの友達から沢山インスピレーションを受けます。僕が常日頃製品に加える変更や改良には全て理由や裏話があります。

●デザインへの継続的な気配り
MRSのデザインチームは定期的に製品をアップデートしています。毎年MRSでは製品ライン全体のデザインを最適になるように調整して、十数個のテスト用のボートを制作します。そしてデザインのアイデアを検証したり、その製品のパフォーマンスを測定します。

家族と友人と過ごす休日 2022年夏

●素材に対する高い品質基準
ここが重要なポイントです。MRSで使用される生地は特注品です。粒子の等級、ベースとなる生地、接着剤、工程など、全てアメリカの工場で当社仕様で製造されます。これらの高い基準を満たす生地は少量での生産はできません。長期的に大量生産が行われることにより入手が可能となっています。

生産が完了するとまず社内の研究チームが生地を検査します。表面の剥がれやすさや引き裂かれやすさの強度、接着部分の均一性などを含む18種類の項目の検査を別箇に行います。厳格な検査工程を通らない生地は一切使用されません。当社の品質管理工程は厳しいものですが、それでも生地に欠陥があるかもしれませんので、生産部門のチームが全ての製造工程の中でランダムに生地を検査します。もし不適格な生地が見つかると、他の商品が当社の高い基準に見合うよう確認するため追跡調査を行います。

●生産過程での高い基準
MRSは自社工場でパックラフトを製造します。そこでは僕たち自ら品質を管理し、製品開発チームと一緒に新製品の開発を監督します。製造工程の中で沢山の手作業が取り込まれているので、品質の検査・評価チームもいます。彼らは船体が対称になっているかどうか見たり、製品の欠陥をチェックしたり、どんな小さな欠陥でも修理します。品質が保証されない場合や重大な欠陥があれば、その製品は廃棄されます。

●独立した工場、ブランドに対する責任感
僕たちには専用の工場があり設計から生産まで全て行っています。つまり、他社ではよくあることですが、僕たちは他のブランドメーカーの製品を設計・生産しませんし、また他の会社の工場に僕たちのパックラフトの製造をお願いすることはありません。

僕たちのパックラフトは自分達の手で作られる物であり、基準に合うものだけ販売されます。これらの厳格な管理基準があるため当社製品が優れた性能を発揮しています。僕自身、パックラフターとしてこの工程に自信を持っています。

また僕たちは協力することが大好きです。世界中のパックラフター達と連絡を取り、製品の実用性やデザイン面で協力し合っています。彼らの体験から得た助言や提案は非常に興味深く、当社製品の性能向上に役立ちます。

質問 5. アウトドア愛好家として環境保護に対する取り組みを教えてください。

スイスに拠点を置くブルーサイン・テクノロジーによって運営管理

当社で取り扱っている生地はブルーサイン(繊維業界において環境、労働、消費者の観点における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証)の認証を受けています。加えて僕たちは環境に優しい事業を多く支援しています。

●2017年には緑孔雀(絶滅危惧種)繁殖基地に寄付金を送りました。
●2020年にはNorth-China Leopard (中国北部吉林省の森林に生息する豹の一種) を保護する活動をしているNGOに寄付金を送りました。
●2021年には生物多様性を科学的に研究する活動に物資の援助をしました。
●2022年にはsnow leopard(豹の一種)を調査する探検隊に直接参加し、技術的な支援をし、物資の援助をしました。

質問 6. 会社として成長する過程の中であなたが誇りに思う路標となる達成や成果は何ですか

僕たちの作るパックラフト商品自体が一番の誇りです。リビングルームの作業場から始まって以来、ここ15年間ずっとボートを作ってきました。僕たちはまだまだ小さな会社工場であり、それが成果と呼べるのかどうか迷ってしまいます。でも、僕たちの顧客であるパックラフター達に買って良かったと思ってもらえるように頑張り続けるつもりです。次の20・30年でどうなるか、楽しみに見ていてください。

愛娘さんとアウトドアを楽しむ週末

質問 7. 最後にこのインタビューの読者に一、二言ありますか?

僕たちは日本のMRSパックラフトユーザーの旅の計画や体験記を見てみたいです。また僕たちは今後自分たちの体験をユーザーのみなさんと共有する方法も考えています。漫画のように伝えたら、皆さんが楽しんで読んでくれるかもしれません。

それは面白そうですね。いろんな人のストーリーを聞けるのを楽しみにしています。今日はお話をしていただき、ありがとうございました。

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